酒学

第3回 お米って麦って甘いの?日本酒、ビールができるまで
 今回は、ちょっとこむずかしい話ですが、人に話すと「へー」と言ってもらえるかもしれません。
 前にも書きましたが、日本酒やビールなどのアルコール飲料ができるのに必要なものは[糖分+酵母+水]です。 酵母菌が甘い水の糖分を分解して、アルコールと二酸化炭素を作ります。化学式で言うと「C6H12O6→2C2H5OH+2CO2」です。
 でも、お米や麦って甘いでしょうか。確かに炊いたお米やパンを噛んでいると口の中で甘くなっていきます。 これは炊いたお米やパンに含まれるデンプンが、唾液中に含まれるアミラーゼという酵素で分解されることにより、ブドウ糖などの糖分が作られ甘く感じるようになります。 したがってお米や麦がそのままの状態では糖分はありませんから、アルコールを作ることができません。ではどうしてアルコールができるのでしょうか。
 まず、日本酒ですが、これには麹(コウジ)菌というカビを利用します。 麹菌はデンプンを糖に分解する働きがあり、誰が発見したかはわかりませんが、昔の人が炊いたお米にコウジカビが付着すると甘くなるということを発見しました。 日本酒の製造過程は他のアルコール飲料と違って非常に複雑です。まず第1段階として蒸した米に麹菌を付着させ米麹を作り、糖化させることから始めます。 ちなみにこの麹菌を利用する方法が発見されたのは奈良時代の頃で、それ以前はお米を口の中に入れて唾液で甘くしたものを吐き出して、それからお酒を造っていたそうです。 (あまり飲みたくありませんねえ。これを口噛み酒といいます)
 また、高級な日本酒は吟醸酒や大吟醸などと表示して販売されていますが、これはお米を削る割合で決まっています(精米機で長時間かけて削っていきます、これを磨きといいます)。
吟醸酒で40%、大吟醸なら50%以上削られるとその名前が表示できます。なぜ、貴重な米をこんなに削るかというと、山田錦などの酒米と普段食べているお米との違いにあります。 酒米は米粒の中心部分の組織が粗い構造になっていて(この部分を心白といいます)、 酒米と麹菌とまぜた時に麹菌が粗い組織に入りやすくなり、より繁殖しやすくなり、良質な米麹を作ることができます。 安倍首相がオバマ大統領に贈ったことで有名な「獺祭(だっさい)」は、磨き二割三分が売りで、なんとお米の23%しか使ってなくて、残り77%は削られているという非常に贅沢なお酒です (値段も贅沢ですが)。
 日本酒を作る工程は他のアルコール飲料と比較すると複雑で、段階を分けてアルコール発酵させていきます。(初添え、中添え、留添えと言い、これを段仕込みと言います) 段階を分けたのには、昔は米は非常に貴重なものであったので、段階を分けることにより、一度にたくさんの米を使って失敗したときのリスクを軽減するといった意味もあります。 日本酒は製造過程が複雑であるため、造り手の杜氏により味わいが変わりますからいろいろと飲み比べてみるのもおもしろいでしょう。
 次にビールですが、ビールの主原料はもちろん麦です。麦自体は甘くありませんが、どうして甘くするのでしょうか? これが不思議なことに麦から芽が出るとデンプンが糖化され甘くなります(これを麦芽といいます。 ちなみにこれを粉末状にして健康飲料として販売しているのが‘強い子のミロ’です)。
 ビールは麦芽を粉末にして水と酵母、それと苦みや泡持ちをよくするためのホップを入れてアルコール発酵させます。そしていくつかの工程を経てビールが作られます。 ビールには熱処理したビール(exキリンラガー)、熱処理しない生ビール(ex、スーパードライ、モルツ)があり、また使う酵母の違いなどで上面発酵ビール(エール)、 下面発酵ビール(ラガー、ピルスナー)に分類され味わいも異なります。 日本で飲まれているビールのほとんどは下面発酵タイプで、冷やしておいしくすっきりとした飲み口です。 上面発酵ビールは海外のものが多いですが、最近の地ビールブームで日本でも上面発酵ビール(エール)を作っているところが出てきています。 味わいはフルーティーで、深いコクが特徴です。
 このように、日本酒、ビールでひとくくりにして分類していますが、その製法や技法により味わいは大きく変化します。 酔えれば何でもOKという方も、一度利き酒なども楽しまれてはいかがですが。
前へ|お米って麦って甘いの?日本酒、ビールができるまで|次へ