第11回 ニッカウヰスキー、余市工場見学の話
今回は、10月に北海道のニッカウヰスキーの余市蒸留所に工場見学に行った話です。
ここは、NHKの朝の連ドラ「マッサン」でモデルとなったニッカウヰスキーの創業者竹鶴正孝氏が、ニッカウヰスキーの最初の蒸留所として作った工場として有名です。 ニッカウヰスキーは日本に余市蒸留所の他、仙台の宮城峡蒸留所がありますが、ニッカウヰスキー発祥の地である余市蒸留所は、サントリーの山崎工場と共に日本のウイスキーの聖地ともいえます。
さて、今回の北海道旅行は会社の慰安旅行で行きました。基本的に弊社の慰安旅行は昼間は各自自由行動ということで、今回の工場見学は酒好きの4人で札幌からの日帰りバスツアーで行きました。 札幌から余市まではバスで1時間半ほどなのですが、バスツアーの工程は、余市工場件だけでなく小樽の田中酒造という日本酒の蔵元に行く工程も含まれていて、 まず田中酒造さん寄って、日本酒の製造工程を見学し、そこで美味しい地酒を何種類も試飲して、美味しい生原酒を買いまして、余市までのバスの中で朝からお酒で贅沢な時間を過ごしているうちに余市蒸留所に到着するという次第です。(けっこう、へべれけです)

まず、見るからに重厚な、ヨーロッパの古城のような正門のトンネルをくぐります。すると「マッサン」で見た風景が目に飛び込んできます。余市蒸留所は、昭和9年にできたのですが、東京ドーム約3個分の広大な敷地の中に。 当時のままのれんが作りの建物や、竹鶴さんの住まいなどがそのまま残っていて、国の登録有形文化財に認定されているくらい見どころのある建物がたくさんあります。 見学は自由見学もできますが、ツアー見学なのでガイドさん1人に20人くらいがグループになって見学していきます。
ウイスキーの製造過程は麦芽の乾燥、糖化、発酵、蒸留、熟成と進んでいくのですが、見学できるのは乾燥棟、蒸留棟、熟成庫です。まず乾燥棟に案内されます。乾燥というのは発芽して糖化した麦芽を、熱を加え乾燥させる工程です。 この時に熱を加える燃料として使われるのが、ピートと呼ばれる泥の炭(泥炭)です。このピートで燻すことにより麦芽に煙くさい香り(スモーキーフレーバー)が付きます。 スコッチウイスキーの産地であるスコットランドでは、この良質のピートが豊富にあり、スコッチウイスキーの独特の風味はこのピートを燃やした煙くささ(ピーティー)が特徴となっています。 ニッカウヰスキーの創業者である竹鶴氏は本場のスコッチウイスキーを手本にされていますので、泥炭が豊富にある北海道の余市が創業の地に選ばれた要因の一つと言われています。
次に案内されたのは、蒸留棟です。蒸留棟にはポットスチルと呼ばれる蒸留器が7つほどあります。ポットスチルの形状は胴体にふくらみが無いストレートネック型と呼ばれる形状です。
そして加熱方式には余市工場の特徴である石炭を使った石炭直火蒸留です。
石炭を使う加熱方式は温度調整に手間と技術が必要であまり今はあまり他では採用されていませんが、石炭で加熱すると重厚でコクのある味わいと香ばしさが生み出せるそうです。
そしてポットの先端付近にしめ縄が巻いてあります。これは竹鶴氏の実家が造り酒屋であったとのが由来とされています。
奥から3つ目に他よりも小さいポットスチルがありますが、これは1936年の創業時のポットで今でも使えるそうです。次の熟成庫に行くまでに、広大な敷地の中にある創業時の事務所や、実際に竹鶴氏と家族が住んでいた邸宅があり(実際には移築されたもの)、一部中まで見学できます。
次に熟成庫ですが見学の熟成庫は創業時の第1号貯蔵庫です(移築)石造りの平屋の建物の中に、土のままの土間のうえに樽が積まれてあります。 北の大地の空気を吸って、旅立ちの日まで、熟成の時を刻みます。これは見学用ですが余市工場では現在26棟の熟成庫があります。
次に向かうのは「ウイスキー博物館」です。まず入って目にするのは、ブラックニッカのラベルにある髭の人物のステンドガラスです。
実はこの人は実在の人物をモデルにしていて、イギリスの「W・P・ローリー卿」という人物です。
ローリー卿は、香りの効き分けが得意であったとされるウイスキーブレンドの名人で、「キング・オブ・ブレンダーズ(ブレンドの王様)」と呼ばれていました。
1965年にブラックニッカに登場して以来、ニッカを代表とするキャラクターとして定着しています。
という説明を聞いている時に、私の体に異変がおこりました。昨日の深酒と10月の北海道の寒さにより、急きょ別棟のトイレに駆け込むこととなり、続きの説明が聞けませんでした。
後で一緒に行った人に聞くとウイスキーの歴史や、ニッカウヰスキーの歴史などが展示されていて、その説明があったとのことです。
ニッカの創業者である竹鶴氏はNHKの「マッサン」でも描かれていましたが、大変情熱的な、魅力的ある人物で、当時珍しかった国際結婚もされ波瀾万丈な人生を送られました。
興味のある方は本も出ていますし、ニッカのホームページで「竹鶴正孝物語」として出ていますのでご覧ください。(ニッカウヰスキーHP)
ところで、ニッカの社名の由来ですが実は意外なところからきています。創業時の正式な社名は「大日本果汁株式会社」でお酒とは全く関係のない社名です。 これは本格的なウイスキー作りには時間がかかるので、リンゴ作りが盛んな北海道で、まずはリンゴジュースから売り出そうということで付けられたようです。そしてウイスキー販売が軌道に乗った昭和27年に、日本のニ、果汁のカを取ってニッカウヰスキー株式会社となりました。
見学はこの「ウイスキー館」で終わり、後はお楽しみの試飲コーナーです。
試飲室では、「竹鶴」「スーパーニッカ」「アップルワイン」があり(時期によって変わるそうです)、お酒の飲めない人用に「アップルジュース」がありました。
カウンターにワンショットぐらい入ったグラスが置いてあり、自分で取って、水割りにしたり、炭酸水を入れてハイボールにしたりして試飲できます。
(おつまみは有料で売っています)私はおなかが冷えて、ウイスキーは飲めなかったですが「アップルワイン」がおいしかったです。試飲が終わると、その先にはお決まりのお土産コーナーです。ニッカのお酒の他、チョコレートや、鮭トバなど北海道の物産も売っています。
ニッカウヰスキーを代表するシングルモルトの余市やピュアモルトの竹鶴は売っていますが、最近は品薄になっている10年物以上のウイスキーは販売されていないのが残念でした。
以前行ったサントリーの山崎工場は、見学中心で酒好きの方向けといった感じですが、余市工場は広大な敷地の中、芝生が生え、
白樺やトドマツなど木々がたくさん植わっていて、その中を散策するだけでも楽しいので、カップルや子供連れのご家族でも楽しめると思います。車や電車でも行けますが、日帰りバスツアーがお勧めです。
私たちが乗ったバスツアーは札幌市内から出ていまして、余市工場の滞在時間は2時間くらいですが、そのほか日本酒の酒蔵見学、ブドウ狩り、小樽散策、昼食も付いて7,200円、何より遠慮なくお酒が飲めるということが一番です。
なかなか北海道に行くことは無いと思いますが、北海道にご旅行の際は、行ってみる価値はあると思います。
ということで、以前サントリーの山崎蒸留所に行き、今回余市蒸留所と日本のウイスキーの2大聖地を訪れることができ良かったです。それぞれの歴史や、味わいの違いの秘密などもわかり、これから飲むウイスキーの味も一味違ったものになることと思います。